大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(う)2188号 判決

被告人 法月保

〔抄 録〕

原審はその適法に取り調べた証拠により、被告人は昭和三十三年七月二十五日午後十一時三十分頃、焼津市中港町三百七十一番地の一旅館はつね方前路上において見原英男当二十一年と些細な事より口論の上、所携の飛出ナイフを以て同人の胸部、腹部等を突き刺し因て同人に対し全治迄約一ケ月間を要する左側胸部、腹部、左頸部等に刺創の傷害を負わした事実を認定し、被告人に対し懲役八月二年間執行猶予の判決を言い渡したのであるが、被告人が右見原英男に加えた傷害の部位は原判決の認定するように左側胸部、腹部および左頸部等であつて、これ等の個所はいずれもその傷害の程度如何によつては人の生命に影響を及ぼすべき個所であること明らかであるところ、焼津市立病院医師須崎巖作成の見原英男に対する診断書によると、右見原英男の腹部の刺創は腹部内臓に損傷はなかつたが腹膜を刺しており、またその胸部の刺創は第七肋骨を軟骨部において切離し、胸壁胸膜を約七糎切離しているのであつて、右須崎巖の当審における証人としての供述によると、右胸部の刺創が今少し深ければ内部の肋膜を破つており、もしその肋膜も破れていれば開放性気胸により生命の危険を生ずるので、右須崎医師としては右見原英男を診察した際、その負傷の状況より判断してこの点を最も心配した事実が認められるのである。そしてこの傷害の部位および程度と、記録にあらわれている本件犯行の動機、態様、被告人の性行および生活環境ならびに犯歴その他諸般の情状を綜合して考えると、被告人の本件犯行の情状は相当重いものがあるのであつて、原審が被告人に対し執行猶予の言い渡しをしたことは相当でないと認める。論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。

(滝沢 久永 八田)

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